
本作品の舞台となる大陸には、大小問わず無数の国家が存在する。
その中でも特に秀でた国家が5つ。
ここでは、その5大国家について、其々の国主と合わせて概説する。


数多くのダンジョンが存在し、おのおの専門性をもつギルドの連合体によって国家が運営されている。
ダンジョンから得られる多種多様な素材が経済の中心であり、活気や技術的指向という点では大陸随一。
冒険者ギルドのほか、魔法学校や商業ギルド、縫製ギルドなど、多種多様なギルドを擁する。
レイラインには他国間の仲裁役も担う安定した気候の平和国家という面もある。
しかしこれは、ダンジョンという謎多き環境に対して、国主でもある超越種、ドラゴナ・ギルドハートが長きに渡り十分な管理を敷いているという、ある種属人的な信頼のもとにあるといえよう。

レイライン 元首
"不動竜"
ドラゴナ・ギルドハート

超越種のドラゴンで、総ギルド長として国を率いる。ギルド本部創設以前からこの地にあるともいわれる彼は厳格な実力主義者だが、才能豊かな若者――彼にとっては誰しもが“若者”だ――を無数に育成してきた実績がある。
彼が企図したことではないようだが、結果として数多の冒険を潜り抜けて成長した人材の宝庫を誇る、レイラインという国家の礎を築いてきた。
本来の姿は体長20メートルほどのドラゴンだが、日常生活に不便なため、普段は半人半竜の壮年男性といった姿で生活している。


最優、あるいは『マザーコンピューター』という通称で知られる古代種「チェーニィ」が発掘された土地に興った国家で、以来、「チェーニィ」による高度な演算のもと国政を管理し、豊かで安定した農業と交易で食文化や芸術を成熟させてきた。
その国力を背景に、近衛騎士団をはじめ専門軍人を多数抱えている。
運河が流れる首都には美術館や劇場が立ち並び、文化的・軍事的支配力を背景に領土を拡張してきた歴史があるが、近年は『当代における侵略限界』として、内政を重視している点が特徴。
「最大多数の最大幸福の体現」と謳われていた国家は、内政的な成熟に伴い、貧富の差や地方各地での統制の緩みが生まれつつある。国政としては封建的な貴族社会が形成されている他、元首は血に依らず、能力をもって選出される形態を取っている。

チェーニィ 元首
"騎士王"
イーサン・チェーニィ

老齢ながら矍鑠とした元騎士団長の国王。騎士団で歳を重ねるにつれて、勇知兼ね備える実力者として知られるようになり、その功績・能力をもって国王となった。
今は、国民の多くは彼のことを剣の腕が立つ好々爺だと思っているが、彼の本質はその智謀にある。彼が笑うたびに深くなる皺の数だけ、謀略が成ってきたと知る者は少ない。
だが、そうでなければどうやってこの年齢まで玉座を守れようか?
国主であるイーサンは、古代種「チェーニィ」の直接の窓口でもある。
彼の胸の裡を知る者は、ただ「チェーニィ」だけ――。


砂漠の端、今にも砂に埋もれそうな過酷な環境下に置かれた住民たちが、神々への信仰を軸に作り上げた国家。他の土地と比べ『神による介入』の記録が格段に多い。
巡礼や遺跡探索が盛んで、金属や宝石・石材の輸出を主な資源としている。猫を神聖視する独特の文化を持つ。強き神が頻繁に入れ替わるこの地の、現在の統治者は「シェイレト朝」。神の化身である「王」と、その家臣たる神官たちである。主神は砂の神テアデシュ。
シェイレト朝において神とは不滅の存在であり、知的生命体は輪廻転生するものである。むろん、これはネスウ全国民の常識ではない。この地には無数の神が居り、神話も同様。中にはこの考えに同調しない勢力もある。その代表が死者は死後の世界へ行くと考えるケンメレウ教団であり、民衆の信仰も篤い。ネスウの為政者交代は常に神の勢力争いである。次に何か起きるとすればここであろう、と見るものもいる。

ネスウ 元首
"強大なる"
ネフェルメリ

威風堂々たる巨人の女王。
出生時より次代の女王、つまり『神の器』として育てられたため尊大であるが、極めて理知的で、国家の安定と発展を是とし、民の生活を守ることに全力を費やす、『王らしい王』。
王であること、現人神であることを是としつつも、それに見合う知力、武力、そしてカリスマを兼ね備えている。
現王朝の開祖が砂漠に引いた運河が、現在のネスウの繁栄をもたらしていることをよく理解しており、国家事業としてさらなる水路建設を計画、砂漠地域の開拓を進めようとしている。


"監獄都市"と異名をとった国家アルゾンの地を占拠し発展した、自称独立国家。
アルゾンは犯罪に対し厳罰をもって応ずる法治国家であったが、海賊アウルス・ピウスのクーデターにより崩壊。大監獄に繋がれていた凶悪極まる悪党たちが解き放たれた。悪党たちはその能力を大いに振るい周辺を略奪。
そのまま根無し草に戻った者もあったが、拠点を求めた者たちが悪党なりの論理で周辺地域を統治しはじめ、後ろ暗い酒や薬品の調達に略奪から諜報まで、悪どいことにかけては随一の集団――国家と呼ぶことには大きな議論がある――へと成りあがった。
構成員たちは利害が一致する限りはゆるい連帯を形成し、これを維持し続けている。他の国家からは鼻つまみな存在だが、なんの枷もない悪党よりは、キィリングの傘下で多少統制がとれている悪党のほうがマシ、と考えられている節もある。

キィリング 元首
"国喰い"
ウィタリア

不死種の女性。外見は小柄で、可憐なハイティーンの少女である。
キィリングにおけるクーデターでは、武力面での中核を担った強力無比なる吸血鬼で、その力は超越種にも勝るとも劣らぬほど。
彼女は海賊アウルスが夢見た楽園を見事築き上げたが、自身は不死種であるため、悪党たちとはあまり交流を行わなず、どこかに閉じこもっている。
幹部達に指示を出す他には、時おり食欲を満たしに夜陰に紛れどこかへ出かけるのみ。
……夜闇しか知らぬことではあるが、そのたびに、キィリングに反目する何者かが命を落とすことになる。キィリングの悪党たちは、それと知らずに彼女の揺籃に抱かれているのだ。


山岳地帯に位置する自然豊かな封建国家。住民の多くが何らかの武術を習得し、国家全体で見ても戦闘技術の高さを誇る。ただし、地理的条件から外部の諸国家からの介入を受けることは少なく、彼らの情熱と戦闘能力はもっぱら内戦へ使われている。武術と個人の実力を重視し成りあがることを最上とする彼らではあるが、そのために悪魔の力を借りる契約を結ぶことは邪道視されている。
しかし、下剋上・御家の為ならば、と、敢えて誇りを穢し、悪魔契と契約を結ぶ武人も少なくない。
国内で争い合う諸領主は「大名」と呼ばれ、それらを統べるものが「幕府」の「国主」である。これまでにも数多くの大名が国土の3分の1から半分を統治することに成功し、そのうち一握りの大名が幕府を興した。だが、長続きしたものは誰もいない。

ウツシヨ 元首
"大国主"
鵺鳴 黄泉(ぬえなき よみ)

虎の混種である男性の武人。若くして自領を継いだのち、先代の国主を討ち当代の幕府を打ち立てた。戦場では自ら最前線に立ち圧倒的な威圧感と胆力を示し、その姿に心酔し一命を捧げることとした忠臣は数知れず。
一方、政治はやや不得手であり、幕臣の協力を重視しているようだ。下剋上が常の国柄だが、今のところは彼の武力と魅力がものを言ってその地位は安泰に見える。